AZUMINO_ボーカロイド

VOCALOID

アニメ、マンガに続き、最近では海外でもじわじわ人気を得ることに成功しつつあるサブカルチャーが、ボーカロイドです。

2007年にボーカロイド技術を用いたコンピューターソフトウェア、初音ミクが発売されて一気に火がつきました。

はじめのころはすぐに終わるかのように見えたボーカロイドのブームでしたが
それどころか今この瞬間もすさまじい勢いで成長を遂げています。

そんなボーカロイド(VOCALOID、略称:ボカロ)を様々な視点から分析、評論する世間の態勢も、最近やっと整ってきたように感じます。

なのでここでも、それらの記事をもとにして

ボーカロイドとは何か
魅力はどこにあるのか
そしてそれが秘める可能性は何なのか

ということをまとめます。

ボーカロイドの基本

VOCALOID(ボーカロイド)とは、ヤマハが開発した音声合成技術、
および応用製品の総称のことです。

この技術を利用してソフトウェアを商業目的で製造する際には
ヤマハとライセンス契約を結ぶ必要があります。

PCにメロディーと歌詞を入力することで、サンプリングされた人の声をもとにした歌声を合成することができます。

(ちなみに対応OSは基本的にはWindows 2000以降のバージョンで、
マック対応のiVocaloidは日本語のみ使用可能です。)

息継ぎ、ビブラート、口の開け方などの歌の技術の設定から、
エコーや二重母音などの効果の設定も可能です。

コンピュータソフトウェアであると同時に、
楽器の一種であると考えられています。

このようにPC上で作成される音楽は、デスクトップ・ミュージック(DTM)と呼ばれています。

2003年に発表されたVOCALOID 1は英語のみの対応でした。

最初のボーカロイドソフトはその1年後にイギリスの会社により発表された製品LEON、LOLAです。

日本で最初のボーカロイドは同年末にクリプトン社で制作されたMEIKOでしたが、
今のような爆発的なボーカロイドブームを巻き起こしたのは彼女ではありませんでした。

火付け役は初音ミク。
同社が2007年8月31日に発表したボーカロイドです。

年間で1000本売れれば大ヒットというソフトウェア業界において
クリプトン社はこのソフトを発売3か月で25,000本売り上げました。
売り上げにして約5億円です。

初音ミクは初めてキャラクター性を与えられたボーカロイドで、
端的に言ってしまえば、それこそがほかのボーカロイドとの決定的な差異であったわけですが
もちろん話はそんなに単純ではありませんので、
彼女の成功談とともに
のちに少しずつ掘り下げて書かせていただきます。

人を惹きつけるちから

DTMとしての魅力

まず、ボーカロイド全般を見た時の魅力として挙げられるのは、
音源として“歌”を用いることができるという点だといわれます。

現在コンピュータ上で音楽を作成することは珍しくはありません。
しかし、歌を音源の中に打ち込めるようになったことにより、
創作の幅が何倍にも膨らみました。

そしてより自分らしい音楽というものを表現しやすくなったのだということです。

ボーカロイドがあることによって、誰もが歌としての曲を完成させることができるのです。

また人間には不可能な高音域や、
息継ぎの間がない曲でも歌詞をつけることができるため、
その人の作りたい音楽、個性をほとんど素のまま、
発想したものをダイレクトに表現することが可能です。

これらがボーカロイドの普遍的な魅力であるわけですが、
初音ミクおよびクリプトン社のコンセプトに則った製品は
製作者側にインスピレーションをもたらす存在でもあります。

バーチャルアイドルとしての魅力

クリプトン社は、“漫画に出てくるような人格が歌を歌ってくれるようなコンセプトのものがあれば新しい楽器が実現できるのではないか”
と考え、ボーカロイドの音声そのものをキャラクター化しました。

そのため、製作者はアウトプットするばかりでなく
同社のボーカロイドからもたらされるキャラクター性をインプットすることによって
それに触発されて新しいものを作っていくことができます。
そこには常に消費者と商品との間に授受関係が成立し、これが新しい作品を作る原動力となりうるというわけです。

しかしこのキャラクター性ですが、
実はクリプトン社から公式に提供されているデータはほんのわずかです。

たとえば初音ミクの場合ですが、

パッケージのイラスト
年齢:16歳
身長:158 cm
体重:42 kg
得意ジャンル:アイドルポップス、ダンス系ポップス
得意テンポ:70~150 BPM
得意音域:A3~E5

※得意音域はヤマハの音域表記を基にしているため、国際表記よりも1オクターブ高くなっています。VOCALOIDエディタ上での得意音域はA2~E4となりますのでご注意ください。

以上が初音ミクのすべてです。

クリプトン社が細かい設定を行わなかったのは
ユーザーが自由に発想する余地を残すことで
ユーザー自身の手によって思いのまま何度でも新しい初音ミクをイメージして生み出せるのです。

BBCでキャスターが
初音ミクは何千、何万という人々の手によって作られ、成長していくアートの総称なのだと締めくくっていたのはこのためです。

初音ミクは16歳という設定なので、それに合わせて16歳の女の子の心情を歌にします。
これだけで、音楽だけでなく物語もできます。

バーチャルアイドルの誕生であり、アニメを自分で作っているような疑似体験だけでなく、
初音ミクを役者として用いているような感覚でもあります。

コミュニティツールとしての魅力

ボーカロイドを用いて楽曲を作る方々は
ボカロP(PはProducerの頭文字)と呼ばれるのはこのためです。

ボーカロイドは、芸能人のコンセプトとアニメキャラのコンセプトが融合した画期的な創作活動の軸となりました。

こうしてプロデュースしたボーカロイドの最初のお目見えの舞台は
主にニコニコ動画です。
(YouTubeに上がっているものは基本的に転載されたものです。)

創作活動の流れは以下のようになります。

まず、誰かがボーカロイドを使って曲と歌を発表する。
それを聞いた人が絵を付ける、アニメ動画を付ける、もしくはCG動画を作成する。
その曲を人間がカバーする。
その曲に人間が踊りを付ける(のちに踊っているキャラクターの動画が作成される。またゲームやボーカロイドのライブでもそのダンスが用いられる)。
その曲を元に漫画や小説を書いて投稿する(漫画や小説まで来ると、公式に発売されることも多い)。
アニメ化する(ただしそこまで行った例はまだ少ない)。

ニコニコ動画に投稿されているものは基本的にある程度まで完成しています。

その前段階、音楽を作ったり、歌詞を書いたり、絵をかいたり。
ボーカロイドの楽曲作品ひとつの完成に最低数人は携わっているケースがほとんどです。
それぞれの分野のアーティストは
クリプトン社が提供しているピアプロというコミュニティサイトでコネクションを持ちます。

このピアプロにおいて、
クリプトン社はキャラクターの非営利無償での利用を一般に許可するライセンス
”ピアプロ・キャラクター・ライセンス”を展開しているため、
営利目的以外での初音ミクの使用は広く許可されています。

内に秘めたポテンシャル

音楽として

ボカロPからデビューした方もいらっしゃいます。
たとえば、ryoさんという方は以下のように初音ミクを用いて作曲活動を行っていました。

2000年代は”誰が音楽を殺すのか”の犯人探しの時代だったといわれています。
このことは、『初音ミクはなぜ世界を変えたのか』という本のイントロ部分で触れられていました。

1990年代末にCDセールスはピークを迎えたそうですが、
2007年には全盛期の約半分しか売れなくなってしまったということでした。

日本だけではなく、これは世界的に見られた現象で、
問題の犯人はこの場合、インターネットでしょう。

Democratic rights において何処まで楽曲の視聴やダウンロードが許されているかは
アメリカでもいまだに議論の的です。

”無料で視聴できるものには誰もお金を払わない”というのが通説だったので
ライブなどの”体験”を売ることができるほど知名度のあるアーティストでなければもう利益を生むことはできないし、
その場合次世代のアーティストは生まれない、音楽が死ぬ。

2005年以降にYouTubeなどが本格的に運営を開始して以降、
音楽業界にはお通夜のような空気が蔓延していたといいます。

しかし、それは既存のシステムの中にいた人たちだけでした。

誰でも自由に、少ない元手で自分の音楽を室内から世界に発信できる。

これは最大のチャンスでしたが、YouTubeのユーザー数が増えれば増えるほど動画は埋もれていくので、
やはり知名度がなければこちらもなかなかデビューまでこぎつけるのは困難な道でした。

しかし初音ミクは、無名の彼らにも知名度を与える存在でした。

2007年に初音ミクが発表された当初は
音楽業界ではまともに取り扱ってもらえなかったのが現実です。
それもそのはずで、既存の音楽業界には”初音ミク”というジャンルを図るための基盤がなかったわけです。

しかし初音ミクのユーザーが増えるにしたがって次第にその知名度も増していきます。

そうして初音ミクの名前が知られるようになっていって得をするのは
ユーザーである彼らです。

メジャーになりたいのに、まともに聴いてもらえる機会がなかった。

しかしボカロPとして作品を発表すれば少なくとも聞いてもらえる機会は得られます。
そして動画投稿サイトのユーザーの生の評論が直接聞けます。
そのフィードバックを得て、ボーカロイドのユーザーは成長していきました。

ボカロPから音楽業界へメジャーデビューを果たす道を、彼らは自らインターネットとボーカロイドを武器に、切り開いていったといえるでしょう。

デビューを果たしたボカロPにはryoさん、八王子Pさんなどといった方がいらっしゃいます。

彼らがさらに有名になれば、ほかのボカロPの知名度もおのずと上がります。

いわば彼らは一丸となって自分たちの才能を発信するツールの力を強めているのです。

ただ、実際のところメジャーデビューしても一般の風当たりはまだ強いようです。
しかし初音ミクというコンセプトのボーカロイドが生産されてまだ7年なので
今後また世間の評価がどう変化してゆくのかが楽しみな分野だと思います。

技術革新として

ボーカロイドが起こした二次的な技術革新についてですが、
ボーカロイドのユーザーが、
同じ分野のほかのユーザーに、もっと創作の可能性を広げてもらいたいと
無料でさまざまなソフトウェアを配信しているケースがあります。

有名なもので、まず、樋口優さんという方が作成された
”MikuMikuDance”(MMD)と呼ばれるものがあります。

これは初音ミクなどのボーカロイドのキャラクターを3Dで動かすことのできる無料ソフトです。

デフォルトですぐに3Dの動画を作成できる3Dモデルが用意されていて、
ほかのソフトに比べても動作が軽いため、初心者のアニメーション製作のハードルを大きく下げました。

レンダリング作業に長時間かかる他の3Dモデリングソフトとは違い、
MMDはすぐに動画で確認が取れる画期的なソフトウェアです。

さらに、ボーカロイドの歌唱用に用いるプロジェクトファイルを読み込むことで自動的に口パク映像を作る機能も備えています。

もうひとつ、有名なツールとして”UTAU”があります。

こちらは音声合成ツールで、飴屋Pさんという個人が開発、無料提供しているソフトです。

このソフトは、歌わせる声を自由に変えることができるため、
好きな音声を50音順に録音したものを用意すればその声で歌ったボーカル曲が簡単に作れます。

先ほど触れたMMDから派生して、
コンピュータの概念を大きく動かすソフトも開発されました。
もちろん、フリーソフトウェアです。

名古屋工業大学国際音声技術研究所は
独自開発した音声認識システムと音声合成システムにMMDを組み込み、
”MMDAgent” というソフトを開発しました。

このソフトを用いると、コンピュータは人間とリアルな会話を行ってくれます。
その精度の高さは、会話の途中で別の話題を割り込ませても会話が途切れたり
破綻することがないほどです。

また単語によってプログラムされた映像は表情を変えてくれますが、
音声にも表情をつけることも可能です。

以下、この動画の説明文をそのまま貼り付けます。

音声言語情報処理研究の一環として開発された「音声インタラクション構築ツールキット:MMDAgent」の紹介動画です。MMDAgentは音声認識・音声合成・3Dキャラクター表示・音声インタラクション制御などの要素技術を結集したソフトウェアツールキットで、ユーザーは、本ツールで構築されたシステムにより、画面上の3Dキャラクターと生き生きとした会話を楽しむことができます。

この技術をさらに応用して、以下の動画に見られる技術研究もされています。

以下、この動画の説明文をそのまま貼り付けます。

MMDAgentを使った対話型ハンズフリー音声操作インタフェースのデモ動画です。
天井に複数のマイクを設置しているので、ユーザーはヘッドセット等を付ける必要はありません。
また、家電機器はインターネット経由で遠隔操作できるようになっており、複数の家電機器を同時に動かすこともできます。

このように、高度な技術を無料で提供しあって
それらを用いてさらに高度な技術を開発していくという次世代の技術革新がなされています。

経済において

最近ではレコード会社がボーカロイドの歌った楽曲をDC化することも多くなりましたが、
これらの楽曲には今までにない商業化の絶対的なメリットが存在します。
それはその作品に対する世間の評価があらかじめわかっていること。

そのためボーカロイドのCDはリリースされれば必ず買い手がつくので
オリコンランキング上位にボーカロイド楽曲で構成されたアルバムを目にすることも少なくありません。
(2010年5月には Vocalogenesis というアルバムでランキングの1位を初めて獲得しました。)

また、著作権についてですが、
クリプトン社のボーカロイドで発表された楽曲については以下のようになります。

  • 初音ミクをはじめとするクリプトン社のボーカロイドが歌う曲の権利は作詞ならびに作曲者にあるため、
    CD化などについては、レコード会社は直接利権者と交渉を行います。
  • ボーカロイドの歌う曲のデータの権利は、ソフトウェアの利用規約に従っている限りデータ製作者に帰属しています。
  • 著作権管は、作詞作曲者が権利代行団体(JASRACなど)を自由に指定して委託するか、自主管理を行う権利を持ちます。
  • 本来著作権は歌唱者にも与えられるものですがソフトウェアとしてのは初音ミクの権利はクリプトン社にあります。
    そのため、歌唱者を初音ミク並び同社のボーカロイドとして商業活動を行う際は権利者であるクリプトン社の許諾が必要です。

ここで抑えておきたいことは、クリプトン社の戦略です。
同社は商品の権利に固執せず、広く門戸を開くことによって同社のソフトウェアの知名度を上げました。
結果、同社のVOCALOID製品の業界での地位は確固たる物となっています。

従来のビジネスは、商品およびサービスの権利を独占することによって会社は利益を生み出してきましたが
ここにきて、それらを開放することによって成長するビジネスモデルと、その成功例が出来上がったといえるのではないでしょうか。

海を超えて

  • パブリック

最近では外国のメディアで初音ミクが報道されることも多くなってきました。
下の動画はその例です。

カナダのディスカバリーチャンネルでも紹介されています。
翻訳がなくて申し訳ないのですが、
日本語のインタビューも入っているので雰囲気はつかめるかと思います。
とても真剣にボーカロイドとともに派生した現象ならびにポテンシャルについて言及されています。

VOCCALOID=初音ミク

この等式は
日本だけではなく海外でも確定していると言ってい良いと思います。

日本ではすでに何度となくコンサートが行われていますが、
上の動画でも見られるようにそれは海外でも同じです。
2011年アメリカ、カリフォルニア州LAで行われたライブコンサートでは
7,000席のチケットは完売しました。

これ以降もアメリカでは数回ボーカロイドのソロコンサートがあり、
また、台湾、シンガポールなど、アジア圏でも近年開催されるようになしました。
さらには、レディ・ガガが2014年5月に行ったコンサートのオープニングも初音ミクが飾り、
ミクの30分にわたるソロライブが見られたようです。

現在初音ミクは、ある意味日本出身の世界で最も知られるアイドルです。
今までは世界が注目する日本のアイドルというのはいませんでした
(もちろん市場を海外に持ち込まなくても国内利益だけで十分な数字になったから、というのもありますし、
日本は市場取引に関して外国に対しては閉鎖的な傾向があるからというのも大きな理由だと思います)。
しかしそれに対して初音ミクの楽曲は世界217か国に配信されていて、
これは邦楽史上最多です。

2011年にはグーグルクロームのCMの第3弾のイメージキャラクターにも初音ミクは採用されました。
以下の映像がTVとインターネット上で放送されました。

それ以前のクロームの出演者がレディ・ガガ、ジャスティン・ビーバーであることを踏まえると、
アメリカ国内ではかなりの知名度があるということがいえると思います。

トヨタ・アメリカのCMにも彼女は出演しています。

知られている曲は少ないと思いますが、
レディ・ガガのコンサートで“World is Mine,” “Tell Your World(クロームのイメージ曲)” を演奏した時に特に大きな歓声が起きたため、
この2曲は少なくともある程度の海外知名度を得ているのではないでしょうか。

  • プライベート

数年前からYouTubeにおいて海外ユーザーの中にも
”歌ってみた”の様なことを楽しむ方も増えています。

こちらはその一例です。

英語の歌詞はこちら

初音ミクの曲ではなくて申し訳ありませんが
すでに数え切れない動画が投稿されているので興味を持たれた方はぜひチェックしてください。→こちら

”踊ってみた”の様な投稿も最近増えてきたように思います。
特にコスプレをして踊る方が多いようです。

また、海外ユーザーの中には、物語性のある楽曲にコスプレPVを付けて楽しむ方もいらっしゃいます。


しかし、海外ボカロPはまだ誕生していないようです。
ボーカロイドソフトを使っても
実際にはアマチュアミュージシャンと同レベル以上のスキルがなければ楽曲はできません。
つまり難易度が高いためであると思われます。

わざわざ初音ミクを使う利点がないのかも知れないと思われる方もいらっしゃるかと思いますが、
それについては"内に秘めたポテンシャル・音楽として"で少し触れましたので参照してください。


powered by Quick Homepage Maker 4.91
based on PukiWiki 1.4.7 License is GPL. QHM

最新の更新 RSS  Valid XHTML 1.0 Transitional